特集 — 事実で追う ・ 外交・領土
北朝鮮による日本人拉致問題
政府認定17人のうち12人が、今も帰国できていない
1970年代から1980年代にかけて、日本各地の沿岸部などで若者を中心に多くの日本人が失踪しました。日本政府は、これらのうち17人を北朝鮮当局による拉致被害者として認定しています。
2002年の日朝首脳会談で北朝鮮は初めて拉致を認めて謝罪し、同年10月に5人の被害者が帰国しました。しかし残る12人について、北朝鮮側の説明は死亡や入境未確認とするもので、日本政府はこれを裏付ける客観的証拠は示されていないとしています。
政府認定の17人以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者(特定失踪者)が多数存在します。被害者家族の高齢化が進み、時間との闘いが続いています。
現在:政府認定17人のうち12人が未帰国のまま。日朝首脳会談は2004年を最後に開かれておらず、政府は「全ての拉致被害者の一日も早い帰国」を最重要課題と位置づけている。
時系列
- 1977年11月
横田めぐみさん(当時13歳)が新潟市で拉致される
中学1年生の横田めぐみさんが下校途中に失踪。後に北朝鮮による拉致と政府認定される、拉致問題を象徴する事案となった。
- 1978
各地で若い男女の失踪が相次ぐ
福井・新潟・鹿児島などの海岸部で、若いカップルらの失踪が相次いだ(後に政府認定される地村さん夫妻・蓮池さん夫妻・市川さん・増元さんらの事案)。
- 1988年3月
国会で政府が初めて「北朝鮮による拉致の疑い」に言及
参議院予算委員会で、国家公安委員長が一連のアベック失踪事案について北朝鮮による拉致の疑いが濃厚と答弁した。国の公式記録に拉致問題が刻まれた起点となった。
- 1997年3月
家族会が結成される
被害者家族による「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」が結成され、救出を求める国民運動が本格化した。同年、政府は横田めぐみさん事案などを拉致容疑事案として国会で明らかにした。
- 2002年9月
日朝首脳会談 — 北朝鮮が拉致を認め謝罪
小泉首相が訪朝し、金正日国防委員長との会談で日朝平壌宣言に署名。北朝鮮は初めて拉致を認めて謝罪し、「5人生存・8人死亡」と通告した。日本側は死亡とされた説明の裏付けを求めた。
- 2002年10月
被害者5人が24年ぶりに帰国
蓮池薫さん・祐木子さん夫妻、地村保志さん・富貴恵さん夫妻、曽我ひとみさんの5人が帰国した。
- 2004年5月
小泉首相が再訪朝 — 帰国被害者の家族が帰国
再訪朝により、帰国した被害者の子ども5人が帰国。7月には曽我ひとみさんの家族も帰国した。同年11月、北朝鮮が「横田めぐみさんの遺骨」として提出した骨は、DNA型鑑定の結果、別人のものと判明した。
- 2006
拉致問題対策本部の設置・北朝鮮人権法の成立
政府に拉致問題対策本部が設置され、拉致問題への対処を国の責務と定める「北朝鮮人権侵害対処法」が成立した。
- 2014年5月
ストックホルム合意 — 北朝鮮が全面調査を約束
日朝政府間協議で、北朝鮮が特別調査委員会を設置し拉致被害者を含む全ての日本人の包括的調査を行うことで合意した。
- 2016年2月
北朝鮮が調査の全面中止を宣言
北朝鮮の核実験・ミサイル発射を受けた日本の独自制裁強化に反発し、北朝鮮は特別調査委員会の解体と調査の全面中止を一方的に宣言した。以後、具体的な進展は途絶えている。
- 2020年6月
横田滋さん死去 — 娘の帰国は叶わず
家族会の初代代表としてめぐみさんの救出を訴え続けた横田滋さんが87歳で死去した。
- 2025年2月
有本明弘さん死去 — 親世代で存命は横田早紀江さんのみに
有本恵子さんの父・明弘さんが死去。政府認定被害者の親世代で存命なのは、めぐみさんの母・横田早紀江さんのみとなった。
関係する人物(公的記録に基づく事実)
- 横田めぐみさん政府認定拉致被害者
1977年11月、新潟市で下校途中に拉致された(当時13歳・中学1年生)。現在も帰国していない。
政府 拉致問題対策本部 - 帰国した5人蓮池薫さん・祐木子さん、地村保志さん・富貴恵さん、曽我ひとみさん
2002年10月、拉致から24年ぶりに帰国した。
報道各社(検索) - 横田滋さん・早紀江さんめぐみさんの両親・家族会の中心
家族会を設立し、40年以上にわたり救出運動の先頭に立った。滋さんは2020年に死去。早紀江さんは現在も訴えを続けている。
報道各社(検索)
関連する法律・制度
北朝鮮人権侵害対処法(2006年成立)
拉致問題の解決をはじめとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処を国の責務と定め、毎年12月10日〜16日を「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」と規定している。
e-Gov 法令検索日朝平壌宣言(2002年)
日朝国交正常化交渉の基礎となる文書。全文は外務省サイトで読める。
外務省